老後にさしかかると、親族や友人・知人のお葬式が増えてくることになります。
場合によっては、葬式代を負担する場合もあることでしょう。
しかし葬儀費用となると不透明で、やたらにお金がかかるという印象をもつ方がいるかもしれません。
そこで葬儀費用について知っておくべき情報を紹介します。
目次
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葬儀費用の平均相場を知る際もっとも有効な資料となるのが、日本消費者協会が毎年行っている「葬儀に関するアンケート調査」。
もちろん年によって多少の差は出てきますが、おおむね葬儀費用は190万円。お通夜と告別式を含めた総額です。
そしてあくまで190万円は平均であり、およその割合は下記を参考にしてください。
葬儀費用 | 割合 |
---|---|
100万円以下 | 23% |
100万円超〜200万円 | 42% |
200万円超〜300万円 | 25% |
300万円超〜500万円 | 8% |
500万円超 | 2% |
合計 | 100% |
さらに内訳を見てみると、下記の3つに分けられます。
民営利用 | 5万〜17万円 |
---|---|
公営利用 | 数千〜5万円 |
安置施設利用料 | 1日3,000〜2万円 |
ドライアイスなど | 1日8,000〜1万円 |
式場・控室使用料・民営 | 約5万円〜(10人程度)・約10万円〜(50人程度) |
---|---|
式場・控室使用料・公営 | 約2万円〜(10人程度)・約5万円〜(50人程度) |
祭壇・そのほか飾り類 | 約15万円〜(10人程度)・約40万円〜(50人程度) |
棺 | 約3万円〜 |
骨壺 | 約1万円〜 |
死に装束 | ほとんどがサービス |
遺影 | 写真2万円〜 電飾3万円〜 |
霊柩車 | 数千〜数万円 |
---|---|
遺族・親戚移動用車両 | 数万円〜 |
湯かん | 10万円〜 |
---|---|
プロの司会 | 10万円〜 |
生演奏など | 10万円〜 |
飲食費用 | 1人あたり約5,000円 |
---|---|
会葬御礼品など | 1人あたり3,000〜5,000円 |
香典返し | 3,000〜20,000円程度(香典の半分が目安) |
執式料(仏式の場合) | 10万〜100万円以上(寺の格・戒名の位による) |
---|---|
食事・車代など | 数万円程度 |
お葬式時に葬儀会社から見積もりが出た時、上記の金額を目安に確認しましょう。
相場よりあまりにも高いようでしたら、その理由をしっかりと聞くべきです。
葬儀費用の相場はエリアによっても異なります。
先述した日本消費者協会の調査から、関東圏でのエリア別料金目安を算出しました。
エリア | 葬儀費用一式 | 飲食接待費 | 寺院費用 | 葬儀費用の総額 |
---|---|---|---|---|
全国 | 122.2万円 | 33.9万円 | 44.6万円 | 188.9万円 |
千葉 |
166.8万円 | 33.7万円 | 51.5万円 | 236.7万円 |
東京 |
114.6万円 | 38.1万円 | 55.1万円 | 184.3万円 |
都市部になるほど葬儀費用が高くなるのが一般的。とくに葬儀費用一式は、大きな差が開きます。
住んでいる地域の料金相場を確認するには、該当地域を対象にしている葬儀社複数社で見積もりを取るのが一番。
見積もりを取る社数が多いほど平均相場は正確に理解できますし、不当に高額な請求を受けても騙されることはありません。
少なくとも1社だけ決め打ちで、葬儀社を選ぶことは控えましょう。
ひとくちにお葬式といっても、さまざまなスタイルが存在します。
規模や目的・予算によってスタイルを選ぶことが可能。ここでは葬儀の種類とそれぞれの料金目安を紹介します。
人数の目安 | 40〜200人前後 |
---|---|
金額の目安 | 70〜180万円 |
家族や親族のほか、友人・知人や会社関係者なども呼んで行うのが、一般葬。
40人以上の参列者が集まれば、一般葬とみなされることが多いです。
生前関わっていた多くの人々が別れと感謝を伝えられる反面、会葬者が多いほどそれなりに費用もかかります。
人数の目安 | 10〜50人前後 |
---|---|
金額の目安 | 30〜80万円 |
遺族や親族など、個人とごく親しい人たちだけで葬儀を行います。
形式に決まりはなく義理で参列する人もいないため、ゆっくりと故人と向き合い、お別れをすることが可能。
費用が抑えられる反面、その分香典収入は少ないです。
人数の目安 | 20人程度 |
---|---|
金額の目安 | 25〜50万円 |
通夜を行わずに、告別式だけを行うスタイル。
葬儀の小規模化がすすみ、会葬者を絞って時間も短くしようというニーズに対応しています。
一日葬は小規模で行われるのが一般的で、会場代も1日分のみ。
ただし葬儀社によっては前日からの準備で2日間分を請求するところもあるので、注意しましょう。
人数の目安 | 6人程度 |
---|---|
金額の目安 | 10〜25万円 |
通夜と告別式を行わず、遺体を自宅や病院から直接火葬場に搬送し火葬するスタイル。
現在は葬儀全体の1割強が直葬になっており、おひとりさまの増加や高齢化の影響で増加傾向にあります。
火葬を宗教者の立ち合いのもとで行うことも可能ですが、別途手配が必要です。
最近はほかにも、これまでの風習にとらわれない自分らしい自由な発想で行われる葬儀も増えています。
自然葬 | お墓に埋葬せず、海や山に遺灰をまく「散骨」に代表されるスタイル |
---|---|
海洋葬 | 自然葬のひとつ。遺族が乗船し、遺灰を海にまきます。業者が代行する場合も |
樹木葬 | 自然葬のひとつ。遺骨を里山などの土に埋めて、そこに樹を植えます |
友人葬 | 僧侶を呼ばず、友人が葬儀委員長となり取り仕切ります |
ホテル葬 | 社葬や団体葬によく利用されます。家族葬の後などに行われることが多い |
自由葬 | 別名は無宗教葬。宗派のしきたりにとらわれず、故人に最適な葬儀を行います |
生前葬 | 本人が生きているうちに本人が主催する葬儀・告別式です |
市民葬 | 別名は区民葬。自治体が行う、費用をかけないスタイルの葬儀です |
フラワー葬 | 花に囲まれ温かいムードの中で行われるお葬式です |
自分が死んだ時どのようなスタイルで葬儀してもらうかということを、あらかじめ考えておくことは大切です。
葬儀費用の平均額をお伝えしましたが、それでは誰が葬儀費用を支払うのでしょうか?
基本的には喪主が全額を負担します。喪主=相続人であり、血縁関係の一番近い子どもが就任するのが一般的です。
ただし中には喪主が全額を出すことが、経済的事情により難しい場合もあります。
その場合は兄弟で折半するケースが多いです。およそ喪主の6割が、このように他の親族に相談しているとのこと。
他のケースとしては故人が生前に葬儀費用について遺書に記載していたり、何らかの合意がすでに行われている場合もあります。
葬儀費用平均の190万円という額は、けっして安い金額ではありません。
そこで葬儀代を安くしたいと考える方も、少なくないでしょう。
しかし何でもかんでも節約すればよいかというと、今度は質の面が心配です。
ここでは最適な価格で葬儀費用を抑えるためのポイントを6点紹介します。
一番簡単で確実な方法が、葬儀の規模を小さくすること。
規模を大きくして会葬者が増えれば広い式場が必要になり、使用料は高くなります。
同時に飲食費用や会葬御礼品などの負担も、その分増加するのです。
規模を縮小することで、各項目のコストは全体的に安くなります。
葬儀社に依頼する際は最初から1社に任せるのではなく、必ず複数社から見積もりをとって、比較検討するようにしましょう。
葬儀の費用は業者によって、大きく異なります。
なぜなら「祭壇のランク」「料理返礼品のランク」「お布施」が異なるためです。
複数社の見積もりを出すことで平均や最安値がわかり、納得して依頼することが可能になります。
全国の自治体の中には住民の福祉を目的に、地元の葬儀社と提携した低価格の葬儀サービスを提供しているところもあります。
市民葬・町民葬・区民葬を希望する場合は、市区町村の役所に連絡をして葬儀サービスを行っているか確認しましょう。
自治体にもよりますが葬儀プランはいくつかのランクに分かれており、希望するランクが選べます。
式場はさまざまな種類がありますが、公営の式場は民間の式場の約5分の1の値段が相場になっています。
公営の式場は常に混んでいますが場所を確保できれば、かなり安くなります。
民営斎場 | 設備が整っていて、比較的空いています。利用料は高め |
---|---|
葬儀会社斎場 | 対象となる葬儀社を利用した場合に使えます |
火葬場併設斎場 | 公営・民営それぞれあります。火葬する移動距離がかかりません |
寺院斎場 | 寺院が運営。宗教・宗派により制限されます |
葬儀社から見積もりが出て来たら、節約できる所がないかメリハリをつけて細かくチェックしましょう。
たとえば霊柩車などの車両費用は、車種や走行距離によって違いが出ます。
葬儀社が遠方から車を出すとその分負担が大きくなるのです。
また祭壇を「供花組み込み式」にするのも節約になります。
供花組み込みとは、会葬者などからもらったお花を祭壇に飾る方法。
祭壇の費用はほとんどが花の値段であり、花を減らせれば、大幅にコストが削減できます。
葬儀社の広告に「家族葬プラン50万円」と書かれていても、実際には含まれていない費用があるので注意しましょう。
火葬場利用料や飲食代、宗教関係費用などは追加で負担が発生するケースがほとんどです。
トラブルのもとになるのでプランに含まれない料金を、事前に必ず葬儀社に確認しておきましょう。
国民生活センターには毎年コンスタントに、葬儀サービスに関するトラブル相談がきています。
年度 | 2012年 | 2013年 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 |
---|---|---|---|---|---|---|
相談件数 | 704 | 730 | 724 | 764 | 715 | 450 |
※2017年度は前年同期481件
また具体的な相談内容としては、下記のような事例が挙がっています。
・低価格で葬儀が行える業者に依頼したが、必要な保全処理をしてもらえなかった。
・業者のサービスに落ち度があったのに、値引きに応じない。
・互助会を利用したが、積立金で金額を充当するはずの祭壇が割引きしかなっていない。
・事前打ち合わせには入っていなかった項目の料金を請求された。
・見積りではプランに含まれていた骨壷代を、料金改定後のプラン料金に上乗せした。
トラブルの中には不可抗力の内容もありますが、事前に防止して大過なく葬儀をすませられるのが一番。
そこでトラブル回避のため最低限押さえておきたいポイントを3つ挙げてみました。
運転手や火葬場の案内人、葬儀社の担当者などにそれぞれ3,000円〜20,000円程度の心付けを指定されて払う遺族は多くいます。
しかしながら「心付け」は、あくまで感謝の気持ちを表すもの。他人から指定されて払うものではありません。
葬儀社が勝手に「心付け」を渡してしまい、後から請求されるという事例があります。その場合は毅然とした態度で支払いを拒否するべきです。
支払いの有無、金額の価格は自分で決めましょう。
普段から葬儀費用を積み立てている人も少なくありません。
葬儀の積み立てとして有名なのが「冠婚葬祭互助会」。
加入者が毎月一定額の掛金を前払金として払うことで、冠婚葬祭の儀式に対するサービスが受けられるというシステムです。
葬儀費用の備えとして有益な選択肢のひとつ。
ただし実際に互助会の積み立てだけで、葬儀代をすべてまかなうのは不可能。
また「加入により安くなると見込んでいたら、実際は葬儀費用が倍以上かかり積み立ての意味がなかった」という苦情もネットの口コミなどでよく見かけます。
そのため積み立て手段として、他の金融商品を用意しておくのもひとつの方法。
具体的には下記のようなサービスが存在します。
毎月1千円から積み立てられる投資信託。販売手数料・口座管理手数料は0円。
世界水準の金融アルゴリズムに基づく資産運用を、ロボアドバイザーが全自動で実施。
葬儀費用に限らず何かあった時のためにコツコツと積み立てをしておくことは、普段から必要です。
葬儀は突発的に起こるため、中には「葬儀費用が出せない」という方がいるかもしれません。
そんな時の対策法を5つ紹介します。
ちなみに葬儀費用の支払いは、後払いが一般的。葬儀後1週間〜10日程度で支払うケースが多いです。
クレジットカード決済にして、「分割払い」「リボ払い」を選択。分割しながら払いきります。
クレジットカードをもっていない方は、葬儀ローンを利用する方法もあります。
葬儀社がローン会社と提携しているケース。
たとえば「オリコWEBクレジット」では最長36回の分割払いが可能です。
葬儀社が提携していない場合、キャッシングサービスを利用するという方法もあります。
TVCMを流しているような、知名度の高いキャッシングサービスを選ぶと安心です。
故人が生活保護を受けていた。または生活保護を受けている人が葬儀をする場合、国から最低限の葬儀費用が支給されます。
ただし葬祭扶助の範囲は下記に限定。支給額も20万円前後です。
つまりは直葬・火葬のみのお別れに。
葬祭扶助制度を使う場合、自治体の福祉事務所・福祉係に相談します。
故人が「国民健康保険被保険者」「社会保険被保険者」「組合員」の場合、死亡から2年以内に申請すると給付金がもらえます。
支給額は下記の通り。葬儀終了後に各保険の事務所に連絡し、申請を行います。
国民健康保険加入の方 | 10,000〜70,000円(自治体により異なる) |
---|---|
後期高齢者保険加入の方 | 10,000〜70,000円(自治体により異なる) |
被保険者の家族が埋葬した場合 | 50,000円 |
---|---|
被保険者の家族以外が埋葬した場合 | 50,000円を上限に埋葬にかかった実費分 |
被扶養者が死亡し埋葬した場合 | 50,000円 |
国家公務員共済組合加入の方 | 各組合により異なる |
---|
これらの制度を利用することで、極限まで負担を減らして葬儀を行うことが可能になります。
「かかった葬儀費用は、税金の控除対象になるのでは?」と考えている方も多いようです。
しかし結論から述べると、控除対象にはなりません。その代わり参列者からもらう香典は非課税です。
一方相続税では、控除対象になり得ます。
控除対象になる項目は下記の4点。
控除を受ける際は当然領収書が必要になるので、依頼した葬儀社に必ず発行してもらうようにしましょう。
これまで葬儀費用というとブラックボックスで、よくわからないうちに余計なお金がかかっているというイメージがありました。
しかし消費者庁がイオングループの葬儀社に、景品表示法違反で再発防止を求める措置命令を出すなど、改善に向けての動きが加速しています。
適正価格で葬儀を行えるよう、さまざまなポイントをチェックしていきましょう。
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